日本のTV中継スキル

ワールドカップをご覧になっていて、試合内容や選手の技術・能力の高さもあるがTV中継映像自体が迫力あって、映像そのものとしてもたいへん面白く感じた方もおられるだろう。


ズバッと言ってしまえば、日本のTVのサッカー中継スキルは低い。カメラが引きすぎていて、迫力が大いに削がれている。映像が遠すぎて選手が豆粒のように(…と言うと大袈裟だが)とにかく小さくて、こちらも選手の見極めが難しいくらいだ。しかも、カメラマンがプレーや流れの予測ができないので、ボールを追いかけるばかりでプレーの後追い。見てる側としては全く面白くない。そういうことだから余計に自信のなさ気なカメラワークになっていき、ますます安全を期して映像が遠くなる。そんなこんなでフレームの定めができずに試合中もフラフラ。特に下手クソなカメラマンとスイッチャーだと、コーナーキックの際にボールが空中にあるところで遠近を切り替えたりしてくれるので、見てる側は見にくいことこの上ない。サッカーファンの中にはイングランドのプレミアリーグの映像について、近すぎて全体が見えないという不満を漏らす人もいるようだが、全体を俯瞰したいという気持ちはわかるが、それでも如何せん迫力のない、選手が米粒みたいな、臨場感のない中継では気持ちが萎える。フットボールを伝えるものにならない。一般大衆にもつまらないに違いない。陸上トラックがあるから(陸上競技場)だから、という言い訳は全く用をなさない。専用スタジアムでも同じだ。それに海外の映像では、陸上トラックがあってもそれを感じさせない。明確に差が存在している。
もっとも、これでも少しずつ少しずつはマシになってきているのも事実ではある。
しかし昨年9月の日本代表のオランダ遠征の際、TBSが放映したのだが、中継自体は地元のTV局に委託したところ、そのクオリティの高さに驚いたというようなディレクタだかプロデューサのコメントがあったのには苦笑した。何を今さら。あなたたちは海外の試合中継を見たりしないのか。ちょっとでも見れば、その差に愕然とするはずだ、恥ずかしくなるはずだ、本当のコンテンツ屋なら。ま、日本のTV中継は止まったスポーツばっかし中継してきたから、そんなもんばっかりやってきたからこうなんだよ。そういうスポーツが特殊なんであるのに。スポーツ中継を見ていて、そういうスポーツ中継の風情が香ってくる映像には今でもガックシくる。サッカー中継に限らずどんなスポーツ中継であっても、どこそこそういうところの反映が及んでいるのが匂ってくることなんか、そういうところもが、日本におけるスポーツ文化の深まりの妨げや、国際的なスポーツ観戦視点の妨げになっていると思っている。
日本代表の試合中継よりもさらに問題なのはJリーグ中継で、Jリーグはつまらないと刷り込みをしようとしているのか、つまらなく見せようとしているのか、と思うくらい熱意や工夫がない。それでも少しずつはマシになっているけれども、しかし中継によって非常にバラツキがある。カメラマンのスキルとセンス、ディレクタの熱意と工夫、スイッチャーの能力、、、全く足らない。カメラの台数の問題ではない。地方のTV局がプアとは限らず、東京のTV局(もしくは制作会社)よりむしろチャレンジしている風情が感じられることもある。しかし地方によっては何十年まえのクオリティですね、と言いたくなる場合もある。地方、地方によって、そういうレベルの差が結構はっきり分かれる感じもしている。
今年2月の東アジア選手権ではフジテレビが放映したのだが(その直前2月2日の大分でのテストマッチ中継でも感じたのだが)日本のTV中継としては初めて国際映像らしくなってきた感じがして(本当に遅ればせ…だが、それでも)関係者の努力に少し感心して、少し嬉しかった。リプレイ映像をすぐに様々に異なるアングルで4つ3つ連続して流すのも、少しインターバルが空けば遡って別アングル映像をインサートする努力、スーパースローの国際映像らしい使用、、、やればできるじゃないと思った。しかしそれでも、まだまだ引いた映像(できるだけピッチを広くおさめるデフォの映像)では途端に従来のプアな映像っぽくなるというか、カメラの距離感が悪いのか、迫力がなくなってしまうのは相変わらず分析研究の余地がありありとも思ったりした。あと、リプレイは通常の国際映像では3つ4つの違うアングルの連続なんてもんじゃなく5つ6つくらい、しかも実にすぐさまにリプレイが始まり、パッパッパッパッパッと間髪入れずの連続再生。その点は(カメラの台数はあったはずなのに)まだまだ力量不足だった。
3月に開幕したJリーグでは、開幕戦あたりでは昨年までと比べてこうした部分の改善と向上が感じられて少し嬉しかったのだが、何だかいつも間にか元のレベルに戻っていってしまったような気もする。あくまで感覚的なものだが。
ワールドカップが終わってJリーグが再開して、NHKの中継を見た感じでは意識や手法の向上への取り組みは見られたが、リプレイ映像についてはせいぜい2アングルくらいで、しかしちょっとしたプレーの止まった合間合間に何度もリプレイをインサートする努力はしていたが、そのリプレイ映像は毎回同じリプレイばっかり、それも異なるアングルのリプレイ順が全く同じということで、こんなのはまだ努力不足と言うしかあるまい。他のアングルを引っ張ってきなさい。
それからワールドカップでも皆さんがよく目にしたスーパースローも、NHKでも民放でも折角スーパースローが使える環境であっても、その使い方・使い道がわかってないのがアリアリとわかる。ここでもやはりプレー予測ができていないらしいことも。
とにかく意識を高くして頑張っていただきたい。カメラの台数は(予算の関係で台数が少なかろうか)全く言い訳にならない。

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